働きたくない病

 『실어증입니다, 일하기싫어증』

絵・文:양경수[ヤン・ギョンス]

오우아出版社より2016年11月出版 


韓国のイラストエッセイを紹介。

タイトルは실어シロ(失語)と싫어シロ(嫌だ)が違う単語だけど発音が同じなので、掛けている。日本語にすると『失語症です、働きたくない病(症)』。

それをふまえて表紙のイラスト、女性患者と医者の会話はこうだ。

女性:
言葉がちゃんと出てこないし
すべてのことに意欲もなくて、
ひとりでいたいんです。


医者:

失語症です。


女性:

え?言語障害?


医者:

いいえ、働きたくない病


会社で働く人の朝の出勤から退社、会社の飲み会や週末の過ごし方まで、出勤の辛さや仕事中に受ける理不尽など全てのサラリーマンが共感し、笑えるイラストエッセイだ。

し ゅ ぅ ぅ ぅ ぅ っ きん (出勤)

女性のジャケットの色がだんだん薄くなっているが、満員電車など出勤が大変すぎて、デスクに到着すると燃え尽きている。


男性上司:
きみが娘みたいだからだよ

悩んでること話してごらん


女性部下:
息子だけお二人じゃないですか

まさにあなたさまのことですよ


右ページ
息子:父さん、なにしてんの?


↑ なにげなく女性の腕さわってセクハラ(笑



貴重な私の昼食は
貴重なあなたの息子のはなし…


右ページ

귀한민국 (貴重な民国)


↑대한민국(大韓民国)に掛けている。こんなシーンもよくある。



わたしたちの願いは

土 日 〜♪


夢にまで願った


土 日 〜♪


この誠意をつくして


土 日 〜♪


土日よこい



うん、ママ。
ううん、変わりないよ。
ごはん? 食べたよ。

わかった電話するよ。


だけど

100% わたしの味方、

ママだけ…


左ページ:

本をふせて今電話1本してください。


↑ 上京してひとり暮らししながら働く女性だろうか。つらかった日にかぎって母親から連絡がくるもの。なんでわかるのだろうか。



週末は美容院にいって ネイルもして、ショッピングもして 
ともだちにも会って、美味しい店にいって 
クラブにもいって、展示会もいって

計画だけ多くて わたしは横になって

またこうして一日がすぎて…


休むため働くのか

働くため休むのか


右ページ

これは生きているのか…



↑ 花ぎれがシマシマでこの本のおかしさが表れている。日本の単行本(上製本)と同じ造り。イラストエッセイで上製本はかなり上等な造りだ。



↑ 韓国の本ってブックデザイナーの名前が、ありえない小ささで記載されています。

この本は최윤미(チェ・ユンミ)さんのデザイン。



一部紹介してみたが、こんな感じで朝はバスに乗れないところから始まり、私はほぼ全ページ共感し、楽しく読んだ。文は短くても日常語というかスラングが多いため、難しい部分があるかもしれない。イラストの画力とユーモアセンスで1冊読ませる本だ。

韓国も日本に負けず残業の多い国である。この本を読むとまったく日本と同じ状況に、「そっちも大変だね」と仲間意識が芽生える。学校の先生や友人から聞いた話によると、韓国での女性の労働条件は男性のそれとはまだ差があり、辛い状況であり、昇格も難しいと。性別で差がまだあるという話だった。

この本は辛いことをしんどく描かずに、笑えるジョークで表現することで、悩める人々のストレス発散になればというコンセプトではないかと思う。もともと韓国の人々は言葉遊びやジョークが大好きである。


「自分だけじゃないんだ」という共感が心を軽くすればいい。

「だから頑張らなければ」とさらに自分に追い打ちをかけてしまわないように。



遠くない未来、お互いの国の労働条件が良くなることを願いつつ。

本あるいは

本、装幀、作家のことなど。 それから韓国留学記録や旅行について。

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