I DESIGN

とても素晴らしい、美しい仕事をした人がいた。


『I DESIGN 私デザイン』(講談社)

著者:石岡瑛子  

アートディレクター・デザイナー

1938年7月12日生まれ。2012年1月21日 膵臓癌のため永眠。

NHKのプロフェッショナル番組内で、単身NYに渡ったのは40歳だったと言っていた。

本著にはそれ以前の日本での華やかなグラフィックデザイナーとしての話は

全くでてこない。ひたすらNYへ渡ってからの仕事の話である。

よくある幼少時代の話もなければ、NYでの生活の話も全くない。

ひとつひとつの仕事にどう関わり、

人と火花を散らしてきたか。それのみの潔い本である。

日本ではいかに丸く、おだやかに、無感情で仕事をするかが重要だ。

とくに最近のデザイン仕事はその傾向が強いように感じる。

意見を言わず、言われた通りに、波風立てずに、ハッキリ言わないこと。

石岡氏のような、大事なことは何なのか、その実現のために妥協しない人には

そんな日本が窮屈でつまらなく感じたのではないだろうか。


デザインってなんだろう。

なんのためにあるのだろう。

ただPCが使えます。文字レイアウトできます。

それはデザインとは言わないのである。


MACでも買って「デザイナー」と肩書きの入った名刺を作る。

さぁ、あなたも今日からデザイナーです。 ちゃんちゃらおかしいのである。


もちろん予算とスケジュールは絶対だ。コンセプトも重要だ。

その条件のなかでベストのベストを尽くす。

コンセプトを叶えるためのプロセスは本当にこれで正しいのだろうか。

常識と思われて流されてしまうようなところを再度疑ってみる。

その上で良いアイデアを出し表現する。それが仕事だ。

他はただのルーティーンである。


この『I DESIGN』を読むと、これでいいのだと思えて元気がでる。

ジメジメしてはいかんとも思える。

仕事だけでなく、それ以外で辛いことがあった時も

パッとこの本を広げて石岡氏の文章を読むと、

自然とアンテナが立ってやる気になってくる。

そんな、戦う人のための本だ。

人と同じ人生、世間の物差しで測り、想定内で生きるなんてつまらない。


石岡氏がつねに大事にしていたこと。

Original(誰にも真似できない)

Revolutionary(革命的な)

Timeless(時代を越える)

この言葉はNHKの番組の中でも本著でも繰り返される。


「世界をリードするすぐれた表現者は、異口同音に私に向かって語りかける。

表現者にとって最も大切なことは、Discipline(訓練・鍛錬)だと。

私も200パーセント、同感である」

私も同感であるとともに、引き締まる思いがした。


私はこの本を読んで、言葉にすとしたら何だろうと考えた。

そしてぱっと浮かんだ言葉。


創造への情熱と、自由な精神


◎ 石岡瑛子氏の代表的な仕事

シルク・ド・ソレイユ「VAREKAI」
映画「MISHIMA」
映画「ザ セル」
The Fall 落下の王国
映画「ドラキュラ」
デビッド・カッパーフィールドの夢と悪魔
オペラ「ニーベルングの指輪」四部作
ミュージックビデオ ビョーク「COCOON」
ブロードウェイ「M・バタフライ」

ソルトレイク冬期オリンピック

北京オリンピックの開会式

ブロードウェイ「スパイダーマン」

映画「白雪姫と鏡の女王」(遺作)


北京オリンピック 

写真出典:https://en.wikipedia.org/wiki/2008_Summer_Olympics_opening_ceremony

本著はいつでも読み返したいくらいであり、私の力にもなる。

だけどそれよりも石岡氏のこのamazing!としか言いようのない、

圧倒的に美しく夢のような仕事こそが、それこそが、、、


◎ 石岡瑛子氏をもっと知るサイト

「TIMELESS 石岡瑛子とその時代」http://eiko-timeless.com

石岡氏の仕事と生涯を追う評伝を河尻亨一氏がwebでシェアしてくださっています。

いずれ本として出版されるとのこと。


松岡正剛氏の千夜千冊 http://1000ya.isis.ne.jp/sp022-01


NHK プロフェッショナル http://www.nhk.or.jp/professional/2012/0130/

この録画今も時々見返して自分を奮い立たせています。


本あるいは

本、装幀、作家のことなど。 それから韓国留学記録や旅行について。

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