VINGT MILLE LIEUES SOUS LES MERS

『海底二万里』 ジュール・ヴェルヌ

村松潔:訳 新潮文庫 2012年

ジュール・ヴェルヌ(1828年2月8日 - 1905年3月24日)フランスのSF冒険小説家。

『海底二万里』は1870年に発表された海洋冒険小説だ。

以前ブログにも書いた、アントニオ・タブッキの『遠い水平線』の

訳者:須賀敦子氏のあとがきに、アントニオ・タブッキが幼少時代、

この『海底二万里』のネモ船長と心の対話をするくらい影響を受けたと書いてあり、

私もこの作品を今になって読んでみた。

(ちなみに須賀敦子氏は清水正和訳 福音館古典童話シリーズ で読んだそう)

気品があってだけどつかみどころのない国籍も不明のネモ船長。

(ネモはラテン語でnobody(誰でもない)という意味)

タブッキに大きな影響を与えたこのネモ船長は、謎めいた人として描かれており、

どうやらこの人間世界に嫌気がさし、一見世捨て人のように人間に愛想を尽かし、

興味がないのかと思いきや、弱きを助けるようなところがあり、その不思議さが魅力だ。

この新潮文庫には、作中に自然科学に関する専門的な記述に対する注釈が充実している。

海洋生物などの名前もどしどし出てくるので、児童文学というより大人のものという印象。

そしてそういった細かいディテールがさらに物語の世界へ誘ってくれる。

ノーチラス号・ネモ船長、謎の乗組員、海洋生物学者・アロナックス、

その助手・コンセイユ、銛打ち・ネッド。登場人物それぞれのキャラクター設定も

魅力的だ。(あまりに有名な作品なので私のヘタなあらすじは省略)

こんなに大人になって海洋冒険に心踊るとは思いもよらなかった。


一言で言うと「神秘的な海洋冒険」だ。深海の描写もとても美しい。


村松潔氏の訳者あとがきより要約を。

『海底二万里』は1869~70年にかけて、パリのエッツェル社『教育と娯楽』に
連載された。単行本としては、挿絵無しの第一部が1869年に、
第二部が1870年に刊行され、挿絵入りの大型本が1871年に刊行されている。
オリジナル本はいまや稀覯本で手に入らないので1980年代に出版された
復刻版を底本に翻訳。


そこで調べてみた。まずこの『海底二万里』が初めて日本で翻訳されたのはいつか。


『海底二万リーグ』村上啓夫[抄訳]早川書房 1962年。

削除の多い英訳からの重訳だったそう。ちなみに原書はフランス語。

完訳はその約30年後の1993年 江口清氏・訳 集英社文庫。え、123年後?

ソース:ウィキペディア

ソース:http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Vega/1828/lib/VM.html

ウィキペディアだと『海底二万里』石川湧訳、岩波少年文庫 1956年

とあるが、少年文庫だから子供向けに専門的な部分はカットされているのだろうか、、

新潮文庫の装幀は上下巻で1つの絵になる表紙も良いし、文庫でありながら

原書の挿絵も収録されていて否応なしに1870年の冒険気分が味わえる。

カバー装画 影山 徹

扉絵 エデュアール・リユー

挿画 アルフォンス・ヌーヴィル

※ヴェルヌ日本の最新の海底二万里は今年7月に角川から出版されたものになる。

原書が書かれて146年たった今でもなお翻訳出版されている、、、、


いったん、私が読んだ素晴らしい新潮文庫の話はここまでで、

気になったのでさらにいろいろ調べてみた。


まずヴェルヌは1862年に『気球に乗って五週間』で登場。

(ただし生前未刊行・未翻訳に『イングランド・スコットランド旅行』1859年 がある)

日本での最初の翻訳は、1878年の川島忠之助によるフランス語からの

忠実な訳(日本初)で『新説:八十日間世界一周』。

ヴェルヌ作品を多く翻訳した人物に森田思軒がいる(森田氏は英語からの重訳)。

私はまだ森田思軒の翻訳を読んだことはないのだけど、

「十五少年」は漢文スタイルで美しく素晴らしいようだ。

(元は『二年間の休暇』。現在は『十五少年漂流記』で知られる)

一番知りたいことをまとめてくださっているブログがありました。

http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Vega/1828/edition_m.html

誰がいつどこでどのようにしてヴェルヌの作品に出会い、

川島忠之助氏が翻訳することになったのだろうか。

日本人で一番最初にヴェルヌ作品に出会った人は、どんな感動があったのだろう。


実は『地底旅行』とか『海底二万里』『八十日間世界一周』『十五少年漂流記』は

よく聞いたり、ディズニーランドだったり、映画などで知っていたが、

作者が同じだと今まで実は知らず、、、、恥ずかしい。

そんな中、先日図書館で敬愛する羽良多平吉氏が装幀を手がけた『黒いダイヤモンド』を

ジャケ借りしてきたばかりで、ヴェルヌのサインを効果的に使っているのを見て

「同一人物か!」と気付いた次第、、、、

上記ほか、『緑の光線』、『月世界旅行』も読みたいし、

「英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊」にも

リストされている、『地底旅行』。

日本語訳になっているものは全部読んでみたい。


話がいろいろ前後してしまうのだが、ヴェルヌ作品は古典だけあって、

海外の装幀はオーセンティックで美しいものが多い。

出典わからなくなってしまいちょっとズルをするが、ずらっと並べてみた。

34歳で世にでてから80編!とにかく各国でたくさんの作品が

翻訳出版&重訳されているので、

日本も世界でもカバーの種類が多い!(笑 眺めるだけでも楽しい。

Pinterestで検索すると、作品にインスピレーションを得たイメージ画なんかもあって、

どれだけ世界に愛されているのかがわかる。

韓国版の装幀も発見した。どんな訳になっているのか読んでみたい。

新潮文庫のように省略せず注釈もどっさりついているだろうか、、、

[ほかにもリンク]

熱いやりとりが大変勉強になったのでgoo貼るのどうかと思いましたが、

今後の自分のためにも貼ります。

http://oshiete.goo.ne.jp/qa/864288.html


amazonのリンクを集めたページも!

http://www.misheila.sakura.ne.jp/verne-works.html


日本ジュール・ヴェルヌ研究会

http://julesverne.jpn.org


フランスはナントにあるジュール・ヴェルヌ博物館

http://www.mmm-ginza.org/museum/serialize/backnumber/0512/museum_0512.html


昔観た冒険・漂流映画何があったかな、、、そんなのばっかり観ていたのを思い出した。

グーニーズ、スタンドバイミー、ドラエモンシリーズ、ラピュタ、ナウシカ、

ぼくらの七日間戦争、カリオストロの城、コナン、漂流教室、、、


人間の真理を強く描きながら、情景を美しく想像できる古典冒険文学。

いまジュール・ヴェルヌに出会えたことを幸せに思う。

情報も装幀も多いので、まとめきれず長くなった。

本あるいは

本、装幀、作家のことなど。 それから韓国留学記録や旅行について。

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