책방 무사:(本屋 無事)
ソウルは北村に位置する本屋さん「無事」について。
2017年1月、空気があまりに冷たくて、体中の血液がシャーベット状になっているのではないかと感じるほど、痛くて寒い日に책방 무사を訪ねた。外観は少しくたびれた建物に小さな看板がついており、店の前には木製の小さな看板と鉢植えが置いてあった。気をつけないと見逃してしまうような外観だ。店に入ると、すぐ右手から優しく「こんにちはー」という声が聞こえ、顔をむけると淡い紫色のおかっぱにニット帽をかぶった店主が、カウンターのむこうであたたかい笑みを浮かべていた。店の真ん中には昔小学校にあったストーブが置かれ、広さはちょうど秘密基地くらいの大きさだった。
本のジャンルは独立出版物が半分、残りは中古と新刊を販売しているが、ベストセラーは置いていない。全て店主が読みたいと思うものをセレクトしているようだ。
私は1冊1冊本や雑誌、絵本を手に取りながら、さあ今日はどんな本に出会えるかと本に集中していたが、どうも気になる声が聞こえてくる。なんだか違和感がある。なんだろうと手を止めてその声に耳をかたむけると、日本のラジオだった。その雰囲気でわかる、湘南ビーチFMだ。凍てつく真冬の、韓国の伝統が残る北村で、湘南の海の音を聞くとは想像もしなかったことだ。店主に聞くと、なんとこのラジオ番組に出演したことがあり、その時湘南をとても気に入り毎日お店でかけているとのことだった。
私は高校生の頃から1年に最低1度は湘南〜鎌倉に行くほど湘南フリークだ。だから嬉しくもあり、とても不思議な気持ちにもなり、去年は留学の準備やらで一度も行けなかったことを思い出したりした。
ストーブの灯油の匂いと湘南の潮の香りと、本と伝統と。
店主はシンガーソングライターの요조(yozoh)氏。名前は太宰治「人間失格」の主人公:葉蔵から。本人もテレビの音楽番組に出演したり、映画やドラマのサウンドトラックに参加、他の歌手に曲を提供したりもするプロのミュージシャンだ。静かで落ち着いた声だが、芯のある女性だ。
(写真は요조氏のインスタグラムより拝借)
私が集中して本を見ていると、とてもあたたかいお茶を出してくれた。それでラジオのことを聞いたり、気になった本の内容について感想を聞いたりした。ひとつひとつ丁寧に、自分の気持ちに間違いがないように、誠実に話てくれた。
私はこの時はまだ요조氏がミュージシャンだということも知らず、ただ秘密基地のような本屋に、ただならる雰囲気の美しい人がいる。びっくりした。と思っていた。家に帰ってからも店主が気になり検索してみて始めて、歌手ということ、先日紹介したPodcastの番組をもっていることを知った。自分の経歴について多くは話さない人のようだ。
そして
요조氏作の絵本『이구아나 (イグアナ)』も出版されている、、、多彩な人だ。
(写真はVOGUE KOREAより拝借)
우리는 선처럼 가만히 누워 요조 (ft.이상순)
わたしたちは線みたいにじっと横たわって
わたしたちは線みたいに じっと横たわって
届かない天井に 手を伸ばしてみたよね
星を
本当に星を 手で取ることができたら良いのに
そうしたら 君の前に片膝をついて
あの遠い遠い空の果て 光かがやく小さな星
君にあげるよ
行ってくるね
言うことができるのに
わたしたちは線みたいに じっと横たわって
見えないものを見ようと目を閉じてみたよね
どこか 本当に
永遠という 停留所があればいいのに
そうしたら 何かいっぱいに入っているリュックと
枯れない薔薇一輪を持って
わたしたち永遠まで
一緒に行こうと
言うことができるのに
わたしたちは線みたいに じっと横たわって
わたしたちは線みたいに じっと横たわって
책방 무사は明日3月12日で閉店。
店主は済州島に移住する。
店名の「無事」は文字通り、どうかご無事で。の意味だ。
instagram:https://www.instagram.com/musabooks/
Facebook:https://www.facebook.com/musabookstore
住所:종로구 계동 2-127
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