韓国ベストセラーは日本の作品

以前、日韓の装丁比べの記事を書いたときの内容と下記の文章は重複するかもしれませんが、あらためて書いておきます。


韓国のベストセラーTOP10には必ずといっていいほど、日本の作品が入っています。小説は村上春樹、東野圭吾、宮部みゆき、江國香織などなど。

私が留学していた2016年は東野圭吾がTOP5に2作入っていて、さらにエッセイの佐野洋子、曽野綾子もずっとベストセラー入りしていました。

韓国で実際に本をみてみると、言論の自由度はどんどん高くなっていて、小説の内容も多様になってきてはいますが、現代小説はまだこれからという印象。もっと正直にいうと村上春樹に影響を受けたのかな?と感じてしまう作品もあったりなかったり(ある)。

私は韓国の小説が好きでここまで韓国語の勉強をしてきましたが、とても影響を受けたのは韓国激動の時代であり辛い時代に書かれた小説たちです。70年〜90年代初めくらいまでの韓国小説には、そういった社会的であったり戦争に影響を受けたり、また政府を批判するような内容の小説や詩がほとんどですが、一方で言論の自由が認められていない時代でもあったので、政府に目をつけられ国外追放や拷問にあって命を落としたりと、命がけで書かれた作品にはすばらしいものがたくさんあります。

しかし韓国の若者たちにとっては飽きてしまっているのが事実のようです。そこで多分に私小説的で、内容も多岐に渡り、気軽に楽しむことができる日本の小説や、正直すぎるほどまっすぐに書かれたエッセイなどが人気を集めているようです。そしてそれは今にはじまったことではなく、もうだいぶ前からその傾向にあったため、翻訳された日本の作品の多いこと!


そこで今日は、留学中に本屋の平台で多く目撃した作品を、日韓装丁を並べて紹介します。


[東野圭吾]

↑ 左上の原書は題名にもある仮面のモチーフをメインに使用。左下の文庫では単行本とは変えて山荘メインに。韓国語版も文庫のイメージを採用している。

↑ 原書も韓国語版も同じモチーフ。日本人であればおそらくこの麒麟がある橋にあることがわかるが、韓国にはないので橋まで描かれているのかも。さらに韓国語版は上の『仮面山荘殺人事件』とデザインを合わせている。現物が手元にないのだが、同じデザイナーと推測される。

↑ この作品は随分ながくベストセラー入りしていたように記憶している。原書は街をみると夜だが太陽がのぼっている。韓国語版は夜だ。

↑ 私も東野圭吾作品はいくつも読んだが、やはり一番印象深いのはこの2作だ。装丁もとても素敵だ。特に『白夜行』は主人公の男女の幼なじみの関係というか、二人がとった行動の理由みたいなものがこの装丁にあらわれていると思う。タイポグラフィも2作とも絶妙。

↑ 左が『白夜行』、右が『幻夜』だ。たしかに女性が主人公というか、キーではあるが、それを表紙にこう出すと作品の雰囲気が、、、なんだか幼稚に見えてしまう。


[宮部みゆき]

↑ 小さくて見えずらく申し訳ないです。写真をクリックすれば少し大きく見えるかもしれない。 原書は『日暮らし』と『おまえさん』以外は作品によって装丁が違うが、下段の韓国版はシリーズとして出版している。浮世絵を使い、日本語と韓国語を同じボリュームで入れながら日本風な装丁にしている。宮部みゆきは模倣犯のような現代小説も書くが、江戸市井を描いた作品も多く、上段がまさにそうだ。それを汲んで韓国版はシリーズにしたのだろう。


[山田詠美]

↑ ベストセラーではない。が、紹介させていただく。私は山田詠美氏の作品のなかでこの『アニマル・ロジック』が一番好きなのだが(今読むといささか文体に時代を感じる。それでも好きだ)、原書はこの作品の舞台であるマンハッタンが描かれる。これはとても重要なことだ。一方、韓国版はどうだ。これは何だ。さっぱりわからん。私は山田詠美の素晴らしい文章がどう訳されているのか読みたくて、韓国の古本屋で探し、1巻を購入して半年後の帰国直前に2巻をやはり古本屋で見つけ購入するという執念の作品だ。であるにもかかわらずだ。装丁のことはいいとしても、主人公の名前がヤスミンからジャスミンになっていて、同じ意味だとしてもその響きには天と地ほどの違いがあり、主人公の黒人女性がジャスミン?! とても良い作品だが、韓国版は装丁のせいで全然売れなかったのではないかと予想できる。

いまからリニューアルして再販しないかしら。今なら売れる気がします。



エッセイ

[佐野洋子]

怒濤の佐野洋子まつり。どれだけ人気があるのかというのがわかると思います。どの本屋にいっても佐野さんの本どれかは必ずあるほど。

↑ 韓国版はデザイン揃えている。イラストは佐野氏のもの。


↑ はじめのデザインに似ているが、ちょっと変えて。でもこちらもシリーズ化。『役に立たない日々』原書のデザインを踏襲しながら、色のトーンははじめのものと同じ。イラストは佐野氏の。


正直、同じ作家のエッセイでここまでシリーズで揃えられてしまうと、私が読者だったらどれを読んだかわからなくなりそうだ。全集して出すならいいが、作品の性格ごとにデザインされている方が個人的には好きだ。

↑ シリーズはようやく終わり。韓国版はポップな印象。ターゲット層若いのかしらん?女性と動物というモチーフは同じ。

↑ これも韓国版はポップ。この雰囲気は最近の韓国装丁の流行で、どんな内容もポップになっている。原書はクマとウサギ。韓国版はライオンとサル猿?ゴリラ?

↑ 韓国の絵本専門店には佐野氏の絵本この2作がベストセラーとして置いてあった。とても人気らしい。エッセイでも絵本でも佐野氏は大人気!



[曽野綾子]

↑ 正直読んだことなくて、名前だけちょっと知っている作家だったのだが、韓国版がとても話題&売れていて、はじめは韓国の作品かと思い手にとったら曽野氏であった。というか、前にも書いたが、作家のことは考慮せずに売れる装丁で勝負するのが韓国ということか。しかし韓国版はインスタグラムでもよく写真みかけたし、よく売れたのではないだろうか。


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第二弾ともいえる日韓装丁くらべはいかがでしたか。上記以外には益田ミリさんがとっても人気でした。


日本の新書は内容面白いのに外見が出版社ごと同じで、そこにコストをかけないからこそできる内容だったりするのだけど、韓国の軽いペーパーバック風の装丁はとても良いと思うし、日韓ともにあまりシリーズ化しないで読者を楽しませてほしいなと個人的には思います。

ちょっと調べたところ、シリーズ化することで収集欲をかきたて購買に結びつけていたりもするらしいですが、、、、



本というのは、はじめは1枚の紙なのに、集まって束にすると立体物になる。そして内容はもちろんですが、装丁や造本だけ見てもとても面白いから大好きです。


本あるいは

本、装幀、作家のことなど。 それから韓国留学記録や旅行について。

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