ドリアン・グレイの肖像


[ドリアン・グレイの肖像] 
オスカー・ワイルド 訳:仁木めぐみ
光文社古典新訳文庫

 冒頭からネガティブで申し訳ないですが、実は海外翻訳文学が苦手です。

もっと言うと、「いかにも翻訳文体」が苦手です。

それなのにブログのブックレビューがワイルド… 


なぜワイルドなのか。もう7〜8年も前でしょうか、記憶が曖昧ですが

J-WAVEラジオでナビゲーターのロバート・ハリス氏が当時の番組内で

オスカー・ワイルドの本の紹介をしていました。その内容よりも、

あの美声で聞いた「オスカー・ワイルド」という名前が私の中でずっと、

一体どんな作品を書いたのだろうかと気になっていました。

海外文学が苦手な私が最近のちょっとしたきっかけでこの「ドリアン・グレイの肖像」を

読んだわけですが、さすが光文社古典新訳文庫。仁木めぐみ氏の訳が読みやすく、

退廃美的雰囲気や時代の空気を損なうことのない訳文。

こんなに面白く、美しく、興味深い文学を読むことができたこと!!

これはもしかしたら今年一番嬉しかったことの1つではないだろうか。

それくらいです。


この作品を読んでいない方には大変不親切なレビューになってしまいますが、

なにに惹かれるって、ヘンリー・ウォットン卿。ドリアン風に呼ぶとハリー。

この方の独特すぎる、真実なのか天邪鬼なのかただの皮肉屋なだけなのか

よくわからない思想。もしかしたら思想とも言えないかもしれない、

ただの返しなのかもしれないセリフがやみつきになるのです。

読んでいる間に「ヘンリー卿はこれを何て言うだろうか」と登場を待つ自分がいました。

それからやはりドリアンの心象語りも表現美しく、霧の深い重いロンドン、、、

ゴシックホラー的なんて簡単に言っては怒られるだろうか。

そして!!本好きな方は皆気になったはずの、

ドリアンが美しい魂を失っていくきっかけとなった、ハリーがくれた本! 

あれは一体どんな本なのだろうか。ワイルドの中では具体的なイメージが

あったのだろうか。または実際に世にある作品なのだろうか、、、 

この本だけではなく、作品中では具体的に書かれない様々なことがある。

ドリアンが重ねていく悪事の数々も具体的には書かれない。

でもそれがなんだか濃い霧によって見え隠れする夜のロンドンのような、

そんな作品です。わたしが最も好きな作風であるのに、苦手意識でもって

今まで読んでいなかったことが悔やまれますが、それでも「ドリアン・グレイの肖像」に

出会えたことに感謝しています。大げさですか?

でも翻訳文学を避けていた今までを思えばそれくらいの感動でした。


ちなみに、新潮社からも福田氏の訳で出版されていて、読み比べをするべく

さっそく購入&積ん読。是非読んでみたい。読むべきと思う。

もしかしたら古風な文体で読みづらいかもしれないけれど、

もっと原文の雰囲気がわかるかもしれない。


翻訳の勉強中なので翻訳文体に関してはちょっとずつ書いていこうと思います。


1回目のレビューで上手く書けず長くなってしまったーー

本あるいは

本、装幀、作家のことなど。 それから韓国留学記録や旅行について。

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