開かれる読書
世界では日々多様な読書会が開かれている。
1冊の本、一人の作家にスポットをあてて皆で語り、共有する。
そうすることで違った読み方を発見したり、より理解を深めることができる。
それが読書会のよいところだ。
最近ではPodcastなどの簡単に配信できるアプリ等を使った、
バーチャルな読書会も多いようだ。
読書メーターのコミュニティなんかもショートな読書会という印象。
韓国には「tv 책(本)」という番組がある。
ソウルのブックカフェに、本が好きな人たちとMCキム・チャンワンが集まり、
ゲストを招いて3冊の本をエピソードと共に紹介する番組だ。
過去にはブッカー賞を受賞したハン・ガンさんも出演し、
23日火曜日の放送はエピックハイのタブロ氏がゲストだった。
http://www.kbs.co.kr/1tv/sisa/tvbook/view/preview/2488937_92092.html
この番組の中でのMCキム・チャンワン氏の言葉が印象的だった。
同じ本でも読む人によって捉え方が様々で、だから素敵なんだと。
集まった観客にもマイクがむけられ自分なりの思いを口にし、
それに対し興奮気味に「そうそう、そうなんだよ」「例えばこんなことじゃないかな」
という応戦がとても楽しく、日本にもこのような番組があったらないいと
羨ましく観ている。
(それは他の番組を観ていても思うことだ。韓国ではクリエイティブに関する
番組が多いのは本当に羨ましい。日本はただだらだらしゃべるだけのお笑い番組ばかりだ)
タブロ氏の書く歌詞の内容は深いものが多いので、
彼は普段から本を読んでいるのか、またどんな本を読むのか、興味があった。
タブロ氏の推薦図書3冊
1.『カルビンとホッブス』ビル・ワターソン (Bill Watterson)
1985年から1995年までアメリカで新聞連載された漫画。
6歳の男の子カルビンと親友であるぬいぐるみのホッブス(トラ)の、ユーモラスで
一風変わった日常を描いた作品である。カルビンの空想、友情などが描かれているそう。
セリフは鋭い批判精神と毒のあるユーモアに満ちており、かわいい絵柄との
ギャップを楽しむ読者が多い。カルビンの精神世界ではぬいぐるみのホッブスは
生きているが、現実的(カルビン以外の人)にはぬいぐるみである。
ビル・ワターソンは商業主義が大嫌いでキャラクターの商品化を一切禁止しているそう。
日本語訳は3冊出版されているようだが、訳が、、、という意見も目にする。
日本語訳しているサイト発見。雰囲気だけつかむのにはいいかもしれない。
(翻訳サイトを使用して意訳しているので間違えているはずだと明記されている。)
私は韓国訳(「캘빈과 홉스」)で読んでみたい。
(一部wikipedia要約)
2.『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか』
ランドール・マンロー(Randall Munroe) 吉田 三知世 (翻訳)
○ 光速の90%の剛速球をバッターに投げたらどうなるか?
○ 人類総がかりでレーザーポインターで照らしたら月の色は変わる?
○ どのくらい高い空から落とせば、その熱でステーキが焼けますか?
著者が運営する、人気のマンガ科学解説Webサイト(https://what-if.xkcd.com)に
投稿された、突拍子もない疑問に科学や数学、行動心理学などを用いて
答えを導き出す本。装幀は、原書と韓国版は同じイラストや空間バランスで
表紙の雰囲気を似せているのに、日本版の表紙は? 面白い科学の本というより、
難しいビジネス書、実用書にも見える。。。実際どのような内容なのかわかった方が
手に取りやすいだろうが、過剰な説明好きは日本のよくないところか。
サイトの認知度が日本で低いため?なにか理由があるあもしれないが、
それでももっと良いデザインがあったはずなので残念だ。
韓国版はタイトルは変えている。「위험한 과학책(危険な科学の本)」。
3.『네 고통은 나뭇잎 하나 푸르게 하지 못 한다:아포리즘』(이성복・李晟馥)
(あなたの苦痛は木の葉一枚青くできない:アフォリズム)イ・ソンボク
詩人である著者は1952年生まれ。1977年に登壇。
今回紹介されたこの作品は2001年出版のようだ。
タイトルにアフォリズムとあるが、weblio辞書によると
「簡潔な表現で人生・社会などの機微をうまく言い表した言葉や文。
金言。警句。箴言(しんげん)。「芸術は長く,人生は短し」の類」。
ようは名言や格言ということだろうか。
韓国ではこのような意味合いの詩集や格言集が多い。
この作品から2004年まで何作か出版されているようなので、
代表作『남해 금산(南海錦山)』と最新作『오름 오르다(登り登る)』合わせて
原書で読もうと思う。
一人で黙々と本に向き合うのも好きだけど、
人と共有したり語り合ったりすることで世界が広がる。
そしてその「世界」というものを広げるために人は本を読むのではないだろうか。
知らないことを知る、他人の喜びや悲しみを知ること。
残念ながら紹介した「tv 책」はこのタブロ氏のが最終回らしい。
どんどん寂しくなる出版界のためにも、
本を心から愛する人のためにも、是非また再開してほしい。
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