2019年はきっと韓国文学の年

私のツイッターは出版社、本屋、翻訳家、本が好きな人ばかりをフォローしているので、日々の出版事情がわかりやすい。とくに最近では日本での韓国文学の人気や、活発な出版ブームに目をみはるものがある。

ツイッターのようなSNSでは自分用の情報しか回ってこないので、もっと公平に知るために、読書メーターではどうだろうかとちょっと調べてみた。

読書メーターでは、この本読んだよと登録できるのだけど、1冊の登録数が300だったら、この本は読書メーターユーザーの300名が読んだよということ。ベストセラーになると何千単位、超ベストだと万単位。だいたいが何百単位が平均で、300前後の本が多い印象。


その中でちょっとびっくりしたのだけど、韓国文学で登録数500前後の作品が結構あった。

それくらいが平均なのでは?と思うなかれ。アジア文学でのこの数字は快挙なのだ。


パク ミンギュ 『ピンポン』『カステラ』

ハン ガン『菜食主義者』『ギリシャ語の時間』

キム ヨンハ『殺人者の記憶法』

そして、

チョ ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』にいたっては、もうすぐ700登録数。

(敬称略)


私はハン ガンの『菜食主義者』に影響を受けて韓国語を勉強し、4年後に留学に行くことにもなった。その2013年くらいから2016年くらいまでは日本で韓国文学を読む人はほとんどいなかった。ところが、イギリスのマン ブッカー賞を受賞した『菜食主義者』、日本翻訳大賞を受賞した『殺人者の記憶法』、『ピンポン』などが2017年頃から注目を集め、2018年~2019年の現在、『82年生まれ、キム・ジヨン』で韓国文学がブームになっている。


韓国文学が多くの関心を集めるよになった、その理由として、作品そのものの面白さや、素晴らしい翻訳が理由の一番であるけれど、韓国ドラマの中で主人公が読んでいる本、人気のアイドルが手にしていた本が話題になり、韓国文学に興味を持った人も少なくないはずだ。


そして以前も書いたが、韓国では日本の小説が人気で、つねにベストセラーのTOP10に3冊は日本の小説があり、さらに1位や2位だったりもする。ジャンルは村上春樹作品のような私小説や、東野圭吾や宮部みゆきの推理小説が人気で、それは韓国ではまだあまり層の厚くないジャンルだからなのかもしれない。

対して日本では韓国の作品のように、社会問題に結びついた小説が多くないというか、あるにはあるけれど、どうも年配男性向けという印象は否めず、それと私小説的なものが圧倒的に多いため、社会や歴史に切り込むような韓国文学が新鮮なのではないだろうか。


お互いがパズルのピースのように、ない部分を持っていて、日本はそれをやっと素直に、ひとつの文学作品として手にすることができるようになった。偏見や先入観から、またはただ知らなかったために読むことのなかった韓国の作品を、あの国の文化に関心のない人も手にするようになった。


2011年にクオンから出版されたハンガン『菜食主義者』。その前にも平凡社から朝鮮文学シリーズは出ていて、こちらの作品群は重要な近代文学選であり、さすがの平凡社だが、やはり「はじめての韓国文学シリーズ」として、寄藤文平さんのデザインで、若い世代に向けて韓国現代文学を開いて見せてくれたクオンのその功績はあまりにも大きい。


私と韓国文学との出会いは2013年。紀伊国屋 新宿店の海外文学コーナーでまだとても狭かったスペースに韓国文学コーナーがあり、『菜食主義者』を偶然手にしたのがきっかけだ。その次の年に『菜食主義者』の読書会が月島のクオンで開かれた。そこに参加し、代表の金承福さんに興味を持ち、国際ブックフェアでの彼女の講演を聞きに行ったりもした。その頃から私は韓国語翻訳者になりたいと思い始めた。クオンは2015年に神保町へチェッコリという本屋をオープンし韓国語原書や翻訳版を販売・イベントなどを開催している。韓国の本を買うならチェッコリしかなかったし、イベントもハングルについてや翻訳のこと、料理やドラマなど多岐にわたって行っていて、私もよく参加していた。

(輸入新刊と同じ扱いの定価の2倍以上の値段で中古本を売っていたことに、当時は疑問に思っていたが)

同じ頃にわたしは自分で韓国に行き、本屋巡りをはじめたのと、トークイベントばかり行っていても自分でも始めなければ意味がないと思い始めたり、他にも思うところあってチェッコリには通わなくなってしまった。


金承福さんは韓国人で日本語ネイティブでもなく、ひとり日本で韓国文学をここまで広めたのは並大抵のことではないし、当時は嫌な思いもされたに違いないが、アイデア、根気、コネクション、知識、行動力、その全てで10年かけて日本に韓国文学という土壌を作ってきた。

いまだに難しい日韓関係の中で、その事業は歴史に名を残すといっても過言ではないのではないだろうか。


今年はさらに、日本国内での韓国文学への関心は高まると予想される。日本のいまの社会情勢や、ジェンダー問題など、多くの語るべきことを抱えている今、お隣の物語に共感したり、励まされたり、生きるヒントになったりするのだと思う。


かなり長文になってしまったが、

上にあげた韓国文学はいま日本で人気の作品なので、最後にリンク貼っておきます。


[菜食主義者]著:ハン・ガン / 訳:きむ ふな 

[ギリシア語の時間]著:ハン・ガン/訳:斎藤真理子

[ピンポン]著:パク・ミンギュ/訳:斎藤真理子

[カステラ]著:パク・ミンギュ/ヒョン ジェフン、斎藤真理子

[殺人者の記憶法]著:キム・ヨンハ/訳:吉川 凪

[82年生まれ、キム・ジヨン]著:チョ・ナムジュ/訳:斎藤真理子


それぞれの作品が何故いま注目を集めているのか、

私が読んだ感想などはまた長くなるので今日はここまでに。


機会があれば是非、読んでみてください。


本あるいは

本、装幀、作家のことなど。 それから韓国留学記録や旅行についても。

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