Bookbinding:文庫本改装
今回の製本教室は文庫本の改装!
古くなってしまった文庫本などに、新しく表紙をつけて丈夫にしつつ、
さらに愛でよう!というのが文庫本改装です。
↑表1
↓表4
表紙の紙は、先日行った紙博で買ったウィギーカンパニーの紙を使いたかったので、それに合わせて本文となる文庫は室生犀星の『愛の詩集』にしました。
この紙は万葉集の句をイメージして描かれた図案シリーズだそうで、私が買ったのは、
籠もよ み籠持ち 掘串もよ み掘串持ち この丘に 菜摘ます児 家聞かな 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ座せ われこそは 告らめ 家をも名をも
という句をイメージして作られた紙。
丘で菜を摘む少女を見そめた雄略天皇が求婚する歌だそうで、さらに身分も身分であり、「われ」が連呼されるほど押しが強いことから、成婚したといわれているとかいないとか。
(現代訳は下記リンクを読んでください)
http://manyou.plabot.michikusa.jp/komoyo.html
それでなんとなく、室生犀星の『愛の詩集』が合いそうだと思ったのだけど、ちょうどこの万葉の歌の返歌に良い詩が収録されていました。
昨日いらしつて下さい 室生犀星
きのふ いらしつてください。
きのふの今ごろいらしつてください。
そして昨日の顔にお逢ひください。
わたくしは何時も昨日の中にゐますから。
きのふのいまごろなら、あなたは何でもお出来になつた筈です。
けれども行停りになつたけふも
あすもあさつても
あなたにはもう何も用意してはございません。
どうぞ、きのふに逆戻りしてください。
きのふいらしつてください。
昨日へのみちはご存じの筈です、
昨日の中でどうどう廻りなさいませ。
その突き当りに立つてゐらつしやい。
突き当りが開くまで立つてゐてください。
威張れるものなら威張つて立つてください。
返歌とする解釈は正しくないとも思いますが、そうとも読めるし、また、昨日であればなんでもできた「かも」しれないという寂しさとも読めます。わたしは今日はこの詩を、求婚を断る詩として読んでみました。
万葉の時代ですから、今とはだいぶ事情が違いますが、自分の身分を「告げてやろうか」とか俺様な男はちょっと嫌ね。
それはさておき、装本の話。
見返しは娘さんの頬色で薄いピーチにしました。花布は着物の長襦袢や帯留めにありそうな赤。栞は黒髪をイメージして黒にしました。
表紙で使った紙が薄かったので、裏打ちといって紙を合紙にして少し厚みをだす作業が加わりました。スティック糊の方が均一に貼れるし、強度的にも問題はないようだったので、そうしたのですが、いざ表紙の厚紙に巻いていくときに水糊でつけるわけですが、なんかブヨブヨしてきてうわーー失敗か!!と思いきや、重しのせて乾かしたらまっっすぐに伸びました。
紙の扱いが難しいのは、水を含むと伸びるところで、アタリをつけても糊ひくとずれたりする。。。
この日にみんなが作った本↑
出版社の人と著者、デザイナーが一丸となって作る表紙をひっぺがしてしまうのは同業者として気がひける。だけど、表紙のなくなってしまったとか、ボロボロになってしまった文庫本を再び蘇らすことができるので、ちょっと文庫本改装にはまってしまいそうです。
本の内容に合わせて紙や栞を選ぶのも、ブックデザインの考えと同じ。
とても綺麗に作るには、まだ練習が必要だーー。
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