花の様な人生のある瞬間
映画が大好きなのである。
しかし監督を気にして観るわけではなく、私はあくまで内容ありきだ。
が、この監督だけは監督の名前だけで無条件に観るようにしている。
ウォン・カーウァイ(王家衛)
上海生まれ香港育ち。代表作に「天使の涙」「欲望の翼」「ブエノスアイレス」「2046」「マイブルーベリーナイツ」「グランドマスター」など。どの作品もとにかく映像、とくに色彩が美しく独特である。話が少し難解であり決して観た後に何かがわかるわけでも、明るい気持ちになるわけでもなく、むしろモヤモヤさせる。しかしその掴めない行間のようなところに何かを感じさせ、惹き付けられるのではないかと思う。
その王家衛監督の作品の中でも最も好きな「花様年華」の話を少ししたい。
この映画は2000年に製作された香港映画である。
「花様年華 In the Mood for Love」
「花様年華」の意味は、花のように美しい時間(人生のある瞬間)。
[あらすじ]
舞台は1966年の香港。隣人同士の2組の夫婦。海外出張の多い夫を持つチャン(マギー・チャン)と、隣人のチャウ(トニー・レオン)はお互いの配偶者が不倫をしていると知り、話をしていくうちに2人も惹かれあって親密になっていく。そしてチャウがシンガポールへ移住することになりチャンとチャウは別れる。お互いに想いはあるがすれ違う。最後はチャウがアンコールワットで秘密を打ち明けるのシーンで終わる。
映画の中では初めに不倫関係にあった配偶者の顔は出ない。チャンとチャウが実際に不倫関係にあったのかもわからない。ただお互いに惹かれているのはわかるようになっていて、全編通してはっきりしたことが何ひとつわからない映画だ。英題のように「Mood」なのだ。そしておそらく主人公2人にとっての花様年華、人生で美しい時間はこの恋愛の中にあった日々であり、二人はやがてすれ違い終わってしまった。つまり花は散るのである。
主人公チャン夫人が着ているチャイナ服は旗袍(チーパオ)というもので、実際この時代の香港のファッションではないらしいが、そこは監督の世界観だろう。この映画の最大の魅力であるこの旗袍、体のシルエットがくっきり際立つが、高い詰め襟が不倫を題材にしながらも禁欲的な大人の恋愛を描くのに成功している。劇中で20着以上の旗袍を着るチャン夫人の、細い首を強調する輪郭の美しさと、様々な柄の旗袍を堪能することができる。
この映画は前作の「欲望の翼」の続編であり、後には「2046」が続く。この「花様年華」でもチャンとチャウが話をするホテルの部屋は2046号室で、それが次作「2046」への伏線になっている。
そしてもうひとつ、最初の方のシーンではチャン夫人が大家さんに本を返すシーンが出てくるが、本好きとしては見逃せない部分だ。
最後のシーンはこうだ。
あの時代は過ぎ去ったまま。
当時の者はもう誰もいない。
ーー
どうだろう。素晴らしいでしょう?
なぜこの2000年の映画を今このように話をしたかというと、韓国の雑誌「PRISMOf」だ。この雑誌は毎号ひとつの映画だけを扱う雑誌で、3号めはこの私の大好きな「花様年華」だったのを以前紹介した책방 무사で発見し購入したためだ。
しかも、책방 무사を出て駅にむかって歩いていたら、「花様年華」というタイ料理レストランを発見した。帰宅してこの雑誌を読んでいたら、そのタイ料理屋がやはり出ていて、店名は映画からとったとのことであった。なんとも偶然。
「PRISMOf」ではこの難解な映画の解説や、劇中に出てくるレストラン、マギー・チャンとトニー・レオンについてなどなど、映画「花様年華」を多角的に詳しく知ることができる。
久しぶりに「花様年華」の世界を思い出し、こうしてブログを書いてみたが、
なんと、
5月27日から渋谷のBunkamura ル・シネマで王家衛監督の過去作品を上映!!!!!
昔の映画はDVDやi Tunesでも観る事ができるが、ぜひ劇場の良い音響でウォン・カーウァイ監督の完璧な世界観を堪能してほしい。
やはり物作りには絶対的世界観、イメージが不可欠だ。
0コメント